丸木スマ展@埼玉県立近代美術館

展示室に入った瞬間から、あ、この展覧会はきっと凄い…という予感が沸き起こった。
その予感は的中する。
『原爆の図』でお馴染みの丸木位里の母親であった丸木スマさん。
位里の妻・俊さんからすすめられて、70歳すぎて絵を描き始め81歳で没するまで700点もの絵を残したという丸木スマさん。
私は今回のこの展覧会までその存在を知らなかったのですが…
よく言われるアウトサイダーアートとかプリミティブアートとかにはくくれないような底知れない絵。
どこまでいっても自由、そして絵の対象物への愛で溢れている。
細かい話をすると、たとえば『柿もぎ』という作品では柿をとる人よりも柿の実の方が大きい。
柿をとる人が木によじ登っている構図なものだから、まるで柿といっしょに人間が実っているみたいにも見える。
その、柿と人の大きさの対比について、スマさん曰く「最初に柿の木を描いたら人を描く場所がのうなりまして…」
行き当たりばったりに描いているようにも取れるけど、私はそうじゃないと思った。
スマさんの中では、秋に結実する柿も人も同じ命なんじゃないか。
柿の絵に限らず描かれた鳥や犬や魚や花、人、仙人…山、川、万物、すべてに同等の愛を感じずにはいられない。
簪(かんざし)と名づけられた、虫や動物、花が画面いっぱいに広がる大作の前で、不覚にも泣いてしまった。
美術教育ってなんなんでしょうか?


スマさんの絵以外では3人の作家、安藤栄作・かわしまよう子須田悦弘が参加。
須田さんは、丸亀でも出してた雑草と、新作のドクダミドクダミすごい。すごい。でも観せ方がちょっと残念。
8/31まで。近郊の方は観た方がいい。ホントに。
http://www.momas.jp/3.htm
常設展ではポールデルヴォーのなまめかしくも美しい夜の絵があって得した気分だ。