むかしのはなし (幻冬舎文庫)

むかしのはなし (幻冬舎文庫)


天才です・・・・・・・・・・・・・・・
図書館で三回も借りて、最近文庫化されたのでやっと買えてまた再読。三浦しをんはやっぱり天才だ。
「評価されるべき作品はこっちじゃなかったのか???」といまだに思う。
しかし、あの直木賞は今までの作品に対する総合的評価で、直近で刊行された作品が『まほろ』だったに過ぎない、と思うことにする。


同世代の作家さんって同じカルチャアーで育ってる感があるので、親近感を抱くと同時に同じような飯食ってて何故?
というような嫉妬も含んでしまうのだけども、しをんちゃんに至ってはそんな嫉妬も抱けないほどひれ伏す、天才!この文才!
しをんちゃんは鬼畜なまでの読書家であると思われる。
私は足元にも及ばないけれども、おんなじような本・マンガで育ってるな!というのはひしひしと感じられる(同年代だし)
それは私がしをんファンたるゆえんの一つでもあるのだけども、しかし凡人が成し得ないあのアウトプット能力。
時に女性作家というのは視覚的表現に優れていたり、何か描写が細かかったりディテールに凝ったり、はたまた子宮でモノ考えてんのよ、的な情念的な文章だったり感覚だったり、はたまた詩のような、歌うような文章を書く人が、多い。
でもなあ、改めて、この三浦しをんという作家さんは、はじめっから性別を超えてしまった書き手だと思う。
ジェンダーとかフェミとか自身も興味があって意識していることなのかもしれないけども、文体も構成も世界観も性別なんてレベルは関係のない事を書き続けている。そしてそれは物語そのものにも投影される。人と人との関わり方が一通りじゃない。というか性別とかマジョリティとか「世間」がいうところの普通だとか、それ以外の面白い面白いそして分厚い関係性が沢山あることを当たり前のように、書く。それが禁忌的だったとしても。
この「むかしのはなし」は日本の民話・昔話を題材にした近未来?はたまた遠い未来?の世界を描いた短編集。
個々の昔話−桃太郎だったりかぐや姫だったりするが−それを三浦しをんなりに解釈をしてアウトプットしたもの。
短編集の個々の話はまったく別の世界だったり多少の時間軸のずれがあるものの、ちょっとづつ関わりあって「壮大なミライ」を描く。
ネタバレすると、昔話をモチーフにしつつ、大筋としては隕石が衝突して滅亡する地球の未来の話。
その「個々の短編」の「ちょっとづつの関わりあい」の匙加減が凄い。絶妙。職人芸です。
作家の意欲とか熱というのがそれぞれの作品に対してどれくらい差があるのか分からないけど、これは相当気合はいって書いたんじゃないかなあと思う。
私がしをんちゃんの友達だったらこれを読んだ後に電話をかけて、そして…「あのシーンのあれは…あの漫画家先生へのオマージュじゃないの?」って漫画の話をしたいと思う。