御誂え

マイッタナァーと思いながら動揺冷めやらぬ。
生活はただダラダラと続いていくようで、その実、そうでもない。手負いの虎。どうなるのだろう?


動揺したまま街をフラフラしていて、草履職人につかまる。
別に草履を買おうという予定でもなく、本来は下駄の方が断然スキなのだけども、来月あらたまった場所に着物を着ていく予定があるので、草履の一足も用意しないとなぁーと思っていたところではあった。
が、その草履職人のおじさんと雑談している中でポツリと予算を言ったら、そこに並んでいる草履の格ではとうてい無理な予算だったのだけども、「なんとかしましょう!」と石坂浩二似の職人さんが乗り気になってしまった。そこはそれ。買う気なかったけどそこまで頑張られたら私も乗り気になるというもので。
台と鼻緒を自分で選んで、目の前で鼻緒をすげてくれた。鮮やかな手さばき。ちょっとした「御誂え」は、気持ちを物凄く贅沢にしてくれた。