中平卓馬展『原点復帰−横浜』横浜美術館

初期から現在に至る大規模回顧展。順路的には最新作から60年代の初期作品まで遡って観ていくようになっていた。個人的趣味では'74年あたりのモノクローム作品に強く魅かれる。廃墟や路地裏や漏水する地下道のような、都市の裏側のようなモチーフばかりをブレと供に粒子の粗いプリントで。とても暗いけれどもとても魅かれる。なんだか切なくなるとともに、私にとっては異界へのドアのように感じる。この頃の『近代建築』表紙をこれらの作品が飾っていたというのだから、これまたスバラシイお話です。
今日観るまで知らなかったけれど…この作家は'77年に病に倒れて記憶の一部を失っているそう。詳しい病状は勿論わからないけれども、写真を撮る行為そのものを一旦失った、としたらどうなのだろう?今まで撮ったものの記憶も失っていたのだろうか?「ハイ、これらは貴方が撮った写真ですよ」と目の前に並べられたとしたら?そして、どういう視点で今回の出品作を選んだのだろうか?
そういう憶測で観ても、観なくても…今回の回顧展は、ある地点で線が引かれるが如く作品傾向の変化が見られて面白い。『原点復帰』という展示タイトルがしっくり来た展覧会。
久しく触ってない1眼レフをいじくり回したい心境。


常設を、あーだこーだ文句言いながら観て回った。最後の最後の常設写真展示で、キャパと沢田教一の戦争写真でドッと疲れた。観るのに力が要る。
横浜美術館に行ったのは3度目だ。天井が高い場所はいいなぁ。