『『小林孝亘展−終わらない夏』@目黒区美術館


波紋。


イイ展覧会−私にとっての−イイ展覧会とは、観てる間にも、すぐさま絵筆を執りたい気持ちにさせてくれる展覧会なのです。
そういう面でも、それ以上の点でも本当に素晴らしい展覧会でした。今年上半期…たいした数の展覧会を観てるわけではないけれども、いまのところベスト1の展覧会。明鏡止水、とはいえない私の、よどんだような水にも一石を投じました本日。
タブローの前で泣きたくなるような作品の数々。終わらない夏というサブタイトルがついてますが、言葉どおり、終わらない夏という感じなのですよ。6/20で終わってしまうのですが…夏中やってほしい。あの、目黒川沿いの公園、あの公園を抜けて、盛夏に観たい展示です。
色味とか構図とかモティーフ、そして光と影の感覚。とにかく美しく素晴らしくそして悲しいのね。巨木を描いた作品が印象的で、木漏れ日の光と影は、一見すると写真を撮ってそれを元に描いているようにも取れるのですが…
偶然にも本日は作者本人によるギャラリートークが繰り広げられていて…時間が無かったこともあり、それには参加できなかったのですけども、漏れ聞える作者談を聞いていると…光の感じっていうのは、もう、最初に浮かんだイメージで描いてるそうで…。この、とくに移りゆくような光なんかをあんな風に描けるというのは、やはり眼が良いのでしょうね。画家でも漫画家でも、良い人というのは眼が良い気がします。いかに自分フィルターを通せるか、というような。ね。
ギャラリートークで見聞きした小林氏の発言は、真摯で真摯で、まぶしかった。氏の絵のようにまぶしく美しかったのです。
大きなキャンバスの作品がよかったのは勿論のこと、ガラスケースに入ったエスキースがまた秀逸。このボールペン画があの大きなキャンバスになったのだな!とシミジミ分からせていただけるし、やっぱり何よりも手を動かしていることが重要だ!と思わされました。
全部の展示を見終わって1Fに降りると、氏のアトリエを再現したスペースがあり、それがまた興味深く魅せ方が旨いなと思いました。氏の机には燃えるゴミと不燃ゴミの収集曜日がメモしてあったり、本棚の本のラインナップに河合隼雄関連とか明恵関連の本があって、傾向が気になったり、なにより作業机一面がパレットと化してマツダの絵具にクサカベの油で描いてることを知れたり、画材ってーのは素人にとって気になることでもあるので、本当に丸々お腹一杯になれる展覧会でありました。会期中、もう一回ぐらい観に行きたい所存であります。
美術館に入る前の公園で、まだ使われてない区民プールをなんとなく柵越しにカメラに納めたりしていて、それは、知らず知らずのうちに今日の展示の隠喩でもあったのだなと改めて思った次第。そして、せめてスケッチブック一冊分くらいは手を動かそうと改めて思った次第。本当に素晴らしかった。