ポール・オースター『ムーン・パレス』(ISBN:4105217038)
美容院は恐ろしく時間がかかりそうだったので、読む本を探していて、結局これを持っていった。しかも美容師が引くほどの分厚いハードカバー。3度目くらいの再読になります。 節目節目には読んでいる気がします。じゃあ今が節目?かというとそんなことは無いですが。
かつて好きだった人はオースターが好きだった。でも、ハッピーエンドになるオースター作品は好きではないという。たしかに、NY三部作からしてみれば、この作品は、一度どん底まで落ちるものの、結局は大人のための寓話としてハッピーになれる。だから私はコレか『ミスターヴァーディゴ』(ISBN:4105217070)がとても好きなのです。
ムーンパレスにおいては、何か行動を起せば事態は変わったはずなのに、結局は何もしないでセントラルパークでホームレスになるあたりの一連の流れと描写に物凄く引き込まれる*1でも、何もしなかったことにも意味があったのだな、と後々思わされる展開。
全ての偶然は必然なのです。そしてそれはとても美しい符号に満ち満ちているのです。オースターの作品には、それがとても溢れているのです。

*1:タイトルにもなっている『ムーンパレス』。NYのビルのネオンサイン『moon palace』のoの字が点滅して、そこに自分が引っかかっているように見えた、餓死寸前の主人公の描写がとても好き。とても効果的。