週末しか本が読めないなんて。

皆川博子『みだら英泉』(ISBN:410362003X)
浮世絵師・渓斎英泉に関する小説。友人に杉浦日向子の『百日紅』を借りて、これがめっぽう面白く、何が面白いって絶対に真似のできない間の作り方と、北斎をはじめ、娘のお栄、居候の善二郎などなど人物描写がとくに良かったのであります。なかでもこの善二郎がのちの英泉であり、ちょっと前から興味のある絵師だったので、外堀から埋める感じでこの本を読んでみました。
タイトルからして、どんな退廃美を感じられるのかしら?とワクワクして読んだのだけど、同じ作者だったら『花闇』の方が凄かったなぁ。でも妹の背中に墨で春画を描くシーンは凄かったですよ。
国芳がちょいと出てくるのもまた嬉しい。


くまざわあかね『落語的生活ことはじめ』(ISBN:458283115X)
落語作家である著者が、1ヶ月間だけ大阪の下町の古い部屋を借りて、昭和十年の暮しを送ったルポ。薄暗い電球の照明一つ、煮炊きはマッチで引火するタイプのガスコンロとカンテキ*1に炭。毎日着物で寝るときは浴衣。風呂は銭湯。勿論テレビも電話も冷蔵庫も無い暮らし。
単なる懐古趣味とかそういうので終わってない点が非常に面白かった。あと、コミュニケーションの不便さっていうのが逆に羨ましい気がしたりして。携帯もなくメールもやりとりできないわけだから、作者に連絡を取りたい人は家をいきなり訪ねて、不在ならばメモを残すなりする。訪ねる側はかなりイライラして不便を感じるのだろうけれども、昔ってそれが当たりまえだったのだな。
今だったら、いきなり訪ねてこられたら面食らうのだろうけど、
おう八っつぁん、茶でも飲んでいきねえ。と貧乏長屋の落語みたいで楽しそうだ。
引っ越して直ぐの何もない頃、ベランダで林檎を冷やしていたことを思い出した。でも今もガスストーブの上に網乗せて餅焼いたりしているんで大差ない気がした。


穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し』(ISBN:4093873496)
歌集。
ゴメン、今更読んじゃってるよ。
フシギ少女のグロさが評価されてたんでしょうか?
もしも私が中学生の女の子であれば、触発されて何か書いていたかもしれません、と思うような妙な力があります。でも私はいささか年をとりすぎているようです。
大半のものに嫌悪を感じてしまい、その中にキラキラと光る砂金の如く好きな歌がありました。夜の描写が素敵です。

*1:江戸では七輪って言いますよね?